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ズボンズのリーダー,ドン・マツオの思考あれこれ。
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演奏は旅行するように。
 ズボンズはセットリスト(曲順)を決めないでライブをやる。殆どの場合、メンバーは何が1曲目なのかすら知らない。すべて流れるまま、「今ここ」でやらなければならない事をボクを媒介にしてキャッチしながら演奏は進んでいく。又、全体もそうだが、1曲1曲それぞれに「フリースペース」があって、その部分をどのように演奏し、どのように発展させていくかは、やはりその時が来て見ないと分からない。誰かがミスしたとしても、ミス自体をどのように上手に先に繋げていけるかで、ライブの満足度も変わってくる。ミスを単なるNGと捉えてしまい、焦りや諦めが出てしまうと、演奏は小さく収束してしまい、一方、そのようなバグは時に新しい地平へ偶発的に連れていってくれる「天からの贈り物」とも言える時があるので、結局どのように生かしていくかは個人の裁量によるのである。しかもそれは「その瞬間」のコンマ何秒という時間の中で判断していかなければならない。勿論、途中でストップする訳にはいかないからだ。

 そういう意味で、ズボンズの演奏での対処の仕方は、人生のそれと同じだと思える。ボクらは常に偶然起こってしまう事態に大小様々な決断をし続けなければならない。そしてそれを上手に生かしていけるか、正しく明るい未来に向かっていけるかどうかである。演奏は絶対的に小さく縮こまってはならない。オーケストラのように大きいものでなくてはならない。そして、時間は絶対的にストップしないのである。

 とは言え、メンバーにも言っていないのだけれど、当日演奏するにあたってボクに何のディレクションもない訳ではない。一応その日の地図のようなものは、完璧な形ではないにせよ、具体的にある。時には特定の曲や曲順である事もあるが、只の言葉や印象である事もある。それを演奏前にいるカフェから会場に向かう途中に思い切り集中にて捻り出すのである。時間にして5分程であろうか。その間だけ、ボクは無口になり、脳のセンサーをフル起動して「今ここ」で感じ取っているものは何か。表現すべき事は何かを探り当てるのである。その短いけれど深い集中を課す事を訓練と思ってやっている。脳の腹筋や腕立てのようなものだ。

 いずれにしても大まかな地図を持っている事で、より自由に演奏に打ち込めるのは確かである。完璧な地図である必要はない。地図自体に自分達で書き込める余白がなければ楽しくないし、またミスがあり迷ったとしても、そこで発見した別の道がより面白い場所へと連れて行ってくれるかもしれない。いつでもフレキシブルでオープンな旅行者でいよう。
by dn_nd | 2010-09-10 07:19
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