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ズボンズのリーダー,ドン・マツオの思考あれこれ。
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大海へダイビング。
 The Fruitsのアルバムのmix down作業中である。もう一通り全曲を終了した。今回のmixは、ボクにとって、来るズボンズのニューアルバムへの助走的意味合いをも併せ持つ。つまり、前回のNightfriend~以降、ボクが経験し、考えた方法論を存分に試しているのである。バンドの本人達は熊本にいるので、mixした音源をmp3ファイルでメールで送り、確認してもらっていて、先日のGBでのライブ終了後にメンバーから電話がかかってきた。mixはかっこ良いと思うが、もう少しギターのレベルを上げて、いつもの自分達のサウンドに近付けて欲しいとの事。

 その注文はすでに予期していた。なにしろボクはメインのギターのリフのレベルを限りなく小さくし、エコーを存分に効かし、全体のサウンドの中で「うねり/流れ」の一部になるようにmixしているのだ。ラフmixではギンギンに鳴っていたギターが音の洪水の中に埋没した完成版を聴いて、彼等は戸惑ってしまっただろう。そこでボクは彼等に問いただした。「このmixはかっこ良いのか、どうか?」

 結局はそれだけなのである。誰もが予想している完成図を持っている。そして、目の前に出て来たものが自分の想定内から大きく外れている時に、どれだけ客観的に判断できるか、それともあくまで自分の想像しているものに固執するのか。もちろん、音楽はあくまで彼等のものであって、これからボクとバンド側の間で吟味・検討していき、然るべき着地点へと向かうことになるだろう。その過程で起こるべき偶有性とどれだけ上手に付き合えるかである。

 ボクらはあまりに強固な「一般的な物の見方」に支配されていて、自分自身の感覚を信じ切れない時がある。「こうあるべき」という物の考え方を一方で認識しつつも、それをあくまで参考の一部とみなし、より良い結論に至り、新しいものを作るには、強い客観性を保つ努力をしなければならない。

 問題は、それを沢山の人と共有できるかどうかであろう。日本人であるボクらは常に「他人はどう思うだろう?」と気にしながら生きる習性を持っている。他人に拒否される事は何より大きなダメージとなる。「そんなの関係ない」と言い切るのは簡単だが、誰もが分かっていても出来ない事なのだ。しかし、やはりボクらはギリギリの崖っぷちに居て、最終的には大海に飛び込む勇気を持たなければ、「その先」へ向かう事が出来ない時期に来ている。誰しも、いつまでもぬくぬくとした場所にはいられないのだ。それに、その場所は本当に自分にとって「自分が保てている」場所なのか。
by dn_nd | 2010-07-31 10:56
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