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中学校二年生の時のクラスメートに村山くんというのがいて、みんなに「おっさん」という愛称で、ちょっと尊敬されている存在だった。声が大きく、常にリーダーシップを取り(例えば合唱コンクールでは指揮だったり)、発言をし、成績も良かった。どのようにしてボクが彼と仲良くなったのかは思い出せないが、何故か彼はボクを気に入っていて、一時期は四六時中一緒にいた時もある。(ちょうど長崎大水害があった年だ。)
村山くんが言った事で、今でもボクの記憶に残っている言葉がある。それはその頃放送してたザブングルというアニメの登場人物をボクが模写しているのを村山くんが覗き込んできて、「マツオくん、そうやって似せようと思って描いたのにどうしても同じにはならないでしょう?その同じにならない部分がキミの個性なんだよ。」と言った。 中学二年生にもなってアニメのキャラクターをセッセと模写しているような若干発育不良だったボクは、ちょっとポカンとしてしまったが、どことなく自分を肯定してくれているその言葉で、それから物の考え方が変わってしまった。ある意味で、自分は他の何物とも違い、違ってて良いのだと自覚したのだ。アイデンティティーなどという言葉はとても思いつかなかったが、誰もが「個性を持たなければ」などと言われていた時代に、個性というのは誰でも生まれながらにしてすでに持っているものだと気付かしてくれた村山くんは、先生や他の大人より、よっぽど「師」だったように思う。彼は大人だったのだ。 その後二人で一生懸命UFOの発見調査を行ったり、かなり真剣に超常現象や超能力の研究をしたりしていたのだけれど、遅い思春期が(ついに)訪れたボクは次第に村山くんとも疎遠になって、また別のクラスメートとつるむようになっていった。高校も同じ学校に進んだのだけど、会っても挨拶を交わすくらいで、次第にその存在は薄れていく。それでも彼の言葉は今でも胸の奥に深く刻まれていて、ボクの生き方を支えてくれているように思う。村山くんは長崎の放送局でアナウンサーをやっているという話だが、ボクは何故だか連絡を取れないでいる。
by dn_nd
| 2010-09-12 07:25
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