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ここのところまたRolling Stonesのブームが来ている。とは言っても、地味なベースプレーヤー、ビル・ワイマンである。そのとらえどころのないプレイとルックスから、いなくても良いとまで言われるビルだが(実際現在は脱退している)、前々からボクはビルのプレイは明らかにストーンズの音楽をドライヴさせる重要な要素だと確信している。以前にも書いたキースの「ロックはあってもロールはない。」という発言の骨子は、キース本人のギタープレイよりも、ビルのベースに負うところが間違いなく大きい。
これは1972年の"Happy"だが、特にヘッドフォンでベースの流れに集中して聴いていただきたい。バンド全体の勢いとスピード感は若さからくるものかもしれないが、聴いていて自然と身体がのってくるバウンシーな感覚と、前へ前へと曲を進行させていくリズムの言わば「3次元」に相当する部分は、明らかにベースの功績である。かっこいいベースラインを弾いている訳ではない。むしろ、一聴しただけでは何を弾いているか良く分からない筈である。(そこがとりとめがないと言われるところだが。)ビルのプレイを聴いていると、そこには決まったベースラインというのは存在しないかのようだ。しかし彼は曲の「鳴らされるべき」リズムを掴み、音符としてのラインを弾くというよりも、音楽を立体的にシェイクさせる=3次元化させるのを自らの役割としているに違いない。それはただ聴いているだけで、頭ではなく身体に作用している。残念ながら、かっこいいベースラインのように目に見えるようなものではない為に、そこに気付く人は少ないが、(ほとんどの人は)注意深く聴かなくとも、その音楽に身体を揺らされている時、それこそがビルの仕事の結果である。曲に生命の躍動を与えていると言っても良い。 Hip Hop以降、誰もがリズムの役割はドラムにありと見なすようになり、ベースはただの「低音の出る楽器」というものの枠を出ないものになってしまっている。どんなベースプレイヤーも曲に生命を吹き込むという全体的なプレイというよりも、考えたラインで、目に見える部分でだけ演奏しているかのようだ。だから「ベースなんていらないんじゃないの?」という人が増えてもおかしくない。(ベースレスのバンドなんてまったく普通のことになってしまった。)しかし、本来ベースはリズムを自由にすることが出来る楽器だとボクは捉えている。ベースプレイヤーの匙加減ひとつで、その曲の「現状」をどのようなリズムとして聴衆に伝えるか、という発動権を握っていると言っても良い。その辺りをもうちょっと追求してみよう、というところでズボンズは次のタームに入っていったかのようです。ムーストップくんの今後に期待したい。 (おまけ:またもStones、72年の"All Down The Line"である。ここでのビルに持っていかれてしまう。うーむ、ベースの力はすごいですね。)
by dn_nd
| 2010-10-30 07:12
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