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ズボンズのリーダー,ドン・マツオの思考あれこれ。
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アンダーグラウンドの実験場。
 昨日はライブが2本。午後6時から渋谷にて、午後9時30分から吉祥寺にて。どちらも「流し」でないフルのライブである。同じ人間が同じ態度で演奏をするのだけれど、自身の音楽へインプットする情報に様々な違いがある為に、結果的にかなり色合いの違うステージになる。それは演奏者本人の状態もあるし、環境や競演する演奏者達からのフィードバックもあるだろう。とにかくその時全身で感じているインプットをズボンズの音楽という装置に入力して、さて何が出てくるのだろう?とボクはステージ上でも考えない訳にはいかない。科学者が実験をしているようなものである。更に、演奏の途中でも「ここでこのような入力があった場合には、どのような変化が立ち上がるのだろう?」と、瞬間の思いつきを加えていく。何も起こらないこともあれば、大きな変化を起こすことになる。その化学変化にボクはスリルを覚えている。

 ボクはほとんどの場合、トラブルがあってもその修繕の為に演奏をストップするのを好まない。ギターの弦が切れたりするのはトラブルの範疇に入らないが、昨晩は1st showでドラムのスネアの皮が破れ、2nd showではギターのボディが割れていたりしたのだけれど、状況を回復させる為に演奏を止めることはしなかった。そのような回避出来ない状況で初めて起動する脳のシステムがある。演奏を続けながらどのような出口があるのかをフルスピードでリサーチするのだ。スネアを交換するまでの間に繋ぎで演奏できることはあるのか(しかも間に合わせでなく、いかにも「それがあたかも最初から予定されていた」かのように)、または万が一替えのスネアがなかった場合にどのような大きなエンディングをスネア無しのドラムから引っ張り出すことが出来るか。その他いく通りもの選択肢が提案されては消え、進行する状況の中で最善の選択を最小限の時間の中でやるのである。そしてそれが上手くランディング出来たところで、音楽はまた違う色合いを見せ、ボクに違う演奏のし方を要求する。

 このような態度で音楽をやっていると、自分が果たして「ロックミュージシャン」という分類に入るのかどうかと考え込んでしまうこともある。演奏しているのも、曲は曲だけれど、あくまで実験に使用する装置に過ぎないような気もしてくる。または、大まかな材料とでも言うべきか。なので、セットリストがどうだったかという話は、ボクにとってはあまり興味のないもので、あくまでその時どのようなアウトプットになったか、ということなのです。
by dn_nd | 2011-01-24 10:22
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