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ズボンズのリーダー,ドン・マツオの思考あれこれ。
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D9T#2"「音楽さん」いらっしゃい。"
 個人ツアー初日、福岡・薬院ユーテロでのライブが無事終了しました。予想以上に気持ちの良いライブになって胸を撫で下ろしています。考えてみたら、今回のような「一人で乗り込んで、各地のミュージシャンとインプロヴィゼーションでロックする」というツアーは始めてかもしれません。(京都nanoではやっていたけれど、インプロする核となるメンバーは一応固定していた)その上、ここ1年はズボンズの活動に専念していて、インプロヴィゼーションだけでライブやるということを全然やっていなかった。

 ステージ上でインプロし、それをライブのショウとして(ロックショウとして)見せるというのは、ものすごい集中力が必要である。また、ステージ上の決まった時間内で間違いのないようにインスピレーションを「得る」為に、自分の(マインドの、か)ドアを「気持ち良く」オープンにしておかなければならない。「気持ち良く」というのがポイントで、それがなければ、「音楽」さんはドア入ってきてくれない。(考えてみれば、ごくごく常識的な事ではあるけれど)ボクの「音楽の作り方」があるとすれば、そのように「音楽さん」がドアから何気なく入ってこれるようにすることである。決して「招き入れて」てはいけない。あくまで「音楽さん」の自由意志で部屋に入ってきてもらい、徹頭徹尾伸び伸びと気持ち良くその空間で過ごしてもらう。「音楽さん」はその空間で思い切り好きに自由に活動を始める。ボクはそこで邪魔にならないように注意を払って、活動に滞りがないようにしなければならない。危険物は除去し、何か必要なものがありそうならば、それを「そっと」配置したり。その結果として外に表現されるものがボクの音楽となる。しかしボクはいつも思うのだけれど、どうしてもそれを「自分が書いた/作った」ものとは思えないのである。何と言っても、それはそこに存在するものだし、ボクのやったことは、ある種の「おもてなし」みたいなものだからだ。

 あたかもステージ上ではボクが指揮権を振るってあれやこれやと指図しているように見えるかもしれないけれど、おそらくバンドのメンバーが理解しているようにそれは「そうあるべき流れ」をサジェスチョンしているだけなのである。メンバーはステージで進行している音楽をすでに理解している。ボクはきっかけを示しているに過ぎない。そうでなければ、ほとんどミステイクも無しにワンステージを良い形でやり遂げる事は出来ないと思う。その意味で、各ミュージシャンは、意識的であれ無意識であれ、全員が「ドア」をオープンにしている状態にある。反対に、あくまで「自分の音楽」「自分のプレイ」をやると頭でがっちり決め付けてしまっているプレーヤーと一緒にあのようなステージをやるのは難しいものである。例えそのミュージシャンが非常に技術に優れたプレーヤーであったとしても。

 「気持ちが良い」というのは、本当に素晴らしい事だ、と実感した。当たり前じゃないかと言われるかもしれないが、「気持ち良さ」こそが全て人生の肯定に成り得るように思う。沢山の混沌があり、沢山の不安があり、沢山の不信がある。その「世界」で自分にとって「気持ちの良い」ことをやる、「身体の全細胞が喜ぶ」ことをやる、というのが何よりも大事なのだ。「音楽さん」が大事なのは、その一点に誘導してくれる所であろう。気付かせてくれることであろう。

 打ち上げの席で、Folk Enough井上くん、ポカムス藤田くん、Making Pancake矢野くんらと論じたのだが、九州のバンドは東京(もしくは大都市圏すべて)のそれと、かなりエネルギーの表出させ方が違うように見える。簡単に言ってしまうと、高いということだ。これまでも何度も九州を行き来しているけれど、このように感じるのは、かなり昔以来のような気がする。震災/原発後に起こった意識の組み換えがそう思わせるのか。最近はズボンズも(かなり)若いバンドと一緒にやることが多いので、比較すると殊更そう感じるのである。これが中央(というのも変な言い方だけれど)で通用するとかどうとか言う話ではないかもしれないが、このエネルギーの高さは九州のロックとして特殊なものだと、とりあえずファイリングしておこうと思う。現在、非常に独特のもので、考える必要あり、と言うことだ。さて、この後はどういうものを見せてくれるのだろうか。
by dn_nd | 2011-06-09 09:06
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