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ズボンズのリーダー,ドン・マツオの思考あれこれ。
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どんまつお通信3。
 昨日、築地にある東京録音と云うスタジオにて、いつもお世話になっている塩田チーフエンジニア(気の良いおっさんでストーンズファン)とのマスタリングの作業が終了し、ここのところ取り組んでいたズボンズの新作がようやく完成した。ようやく、とは言うものの、考えてみたら「この」アルバムを作ることにして作業を始めたのは先週の日曜日のことだったので(その朝にボクは「スタジオでのリハーサルの予定だったけれど、急遽レコーディングすることにする」とメンバーにメールしたと思う。もしかしたら前日だったかも知れない。もちろん、メンバーは誰一人として驚きも何もせず、「あぁ、そうすか」と云う感じで作業に取り掛かってくれた。どんな曲で何をやれば良いのか、などということは、ズボンズにとって問題になることではないのである。常に「これをこういう具合に"今"・"ここで"・"すぐに"やるのだ」という選択しか無いのです)、ものすごく急ピッチで作業を進めたことになる。

 そもそもは、12月のツアーに間に合わせる為に「ちょっとしたEPとかシングル的な軽いものを」と考えて作業を始めたのは10月の頭であったと思う。(いや、最初のレコーディングは9月のイヴェント終わり、打ち上げの場での録音だったので、9月の半ばということになるか)それに合わせてレコーディングを始めて、それは3~4曲程度の「新しいスケッチ」のようなものになる予定だったのだけれど、蓋を開けてみると新しいマテリアルはアルバムの長さ分になり、一通りの完成を見た後で、「これはズボンズとは言い難い」と云うマッタ&ムー(そして更に数人の親しい人々)の意見があり、(ハッキリ言うと、これはドン・マツオのソロではないかと云うことである)それはやはり違うのだろうなと云うことで、「ズボンズとして疑問の余地のない」作品を作る必要に迫られたのである。これが10月の終わり。

 その時点でもボクは3月にアメリカツアー中に完成させてきた新作のイントロダクションになるような「軽いEP、もしくはシングル」を想定していたのだが、過去にやりかけていた録音物をチェックしている内に物事はそう簡単に進まなくなってしまった訳である。12月にはツアーがスケジュールされていて、それには持って行かなければならないのだから、当然締め切りはタイトなのである。ところが、創作意欲というものは「待ったなし」でグイグイと湧いてくるので、結果として無理を重ねて仕上げることになる。今週のボクはこんなであった;

11月7日 5曲のEPにする予定だったのだが、どうも作品として完結しない(と言うか、作品が「完結させてくれない」)ので、寝起きのまどろみの中で別の曲のストックがあったことを思い出し、朝から作詞作業に入る。午後西荻窪にて、エンジニア三木くんにお願いしていたmixのデーターを受け取る。夕方までに詩を完成させ、すぐに歌入れ。(訃報を回覧してきた近所のおばさんに「何度もピンポン押したのに出ないんだもの。あんた随分がんばって音楽やってたわねぇ~。」と言われる。2階の自室で歌入れしていたので、外にまる聞こえなのである。ハハハ。)マッタちゃんに追加のキーボードをダビングして貰い、夕食後深夜までエディット作業。

11月8日 聴いてみると三木くんのやってくれたmixが、求めているものと違うものだったので、結局mix作業をイチからやり直しすることに。更に昨日歌入れで発見したマイク選別とトラックの相性を考え、午前中に別の曲のヴォーカルを録り直す。エディット。午後よりmix作業。夕方に三木くんがやってきて黙々とリ・ミキシング作業を進める。マッタちゃんが作ってくれたチリコンカンとワインをやりながら、しかし三木くんが帰宅後も作業の続き。一応の完成の一歩手前まで来たような気がしていたのだが・・・。

11月9日 朝聴いてみるとどうも違うような気がするので、トラックを録り始めた頃のバランスに立ち返ってみると、やはり最初にあった無鉄砲な暴力性が無くなり、洗練されてしまっているように聴こえる為、再度ミキシングをやり直すことに。この日は吉祥寺GBにてレギュラーライブの日だったので、午後4時のサウンドチェックまでにはどうにか、と思っていたのだけど、結局サウンドチェックはすっ飛ばし、本番直前まで作業をやり続けたものの、半分の3曲しか出来なかった。8:30pmに打ち合わせの予定があったので8時前に自宅を出て、打ち合わせ後9:30pmからライブ。(とても評判は良かった)帰宅後、ちょっと寝ようと思ったのだが寝れず(当たり前だ。ライブやって興奮もしているし、やらなければならない作業はまだまだ沢山あるのに、ボクの脳はそう簡単に休ませてくれない)、そのままmix作業に入る。

11月10日 依然徹夜のmix down。またもまたも思いついてしまい、1曲のヴォーカルを録し直すことに。(なんと結局これは使用しなかったのだが!!)エディット。ミックスダウン。午後1時に築地の東京録音に行かなければならないので、猛スピード&スーパー集中力で最後の曲のミックスを終了する。(それでも40分遅刻した。すんません。)
 マスタリングは、最終的にCDになったときにどのような曲順で、曲間で、音質で聴いてもらうか、と云う最終的な作業である。以前ボクのソロアルバム"New Stone Age"の時にmixを失敗し(それがmixをやった初めての経験だった)、全曲やり直ししてもらった経験があるので(3日徹夜した)、マスタリングはちょっと緊張する作業である。今回はmixに問題はなかったものの、非常に特殊なmixでもあるので、すんなりと物事は運ばず、アナログテープに落とし込んだり、真空管のコンプレッサーを使ったり、業者がたまたま持ってきていた新製品の高級コンプ(のサンプル)を使ったりして、とにかく良い質感を得る為に格闘したのである。塩田氏の「これで良いでしょう」という太鼓判とボクの合意が1曲目に出たのがすでに午後5時近かったのだけど、その後の作業はスムースに進み、8時前には完成を見た。(途中、曲間を決める時に、さすがのボクもほんの数秒居眠りして聴き逃してしまい失笑を買ってしまったのだけれど)地下鉄に乗り、満員の中央線に乗って自宅に戻った時は、まぁ、やはり疲れ果てていたですね。

 そして、今日である。本当は創り上げてしまった後のデプレッションについて書くつもりだったのだけど、ドキュメントになってしまった。もう書き疲れたので、また次回書くです。

 ともかく、ズボンズの新作は「良いです」(三四郎風に)。ご期待あれで、あります。
by dn_nd | 2011-11-11 11:01
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