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ズボンズのリーダー,ドン・マツオの思考あれこれ。
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OZ Tour#10.2 「Up&Down。」
 アメリカツアーの為の就労ヴィザ(詳しく言えば”アーティストヴィザ”)取得の為のやり取りをやっている。大きな団体や企業に属していないボクらは個人での申請となり、これがまた来て欲しくないのではなかろうかというほど厳しい審査がある。とにかく提出しなければならない書類を方々にお願いしてかき集め、向こうの弁護士事務所(弁護士なんて生涯無縁であろうと思っていたのだが、アメリカに於いてこれを避けることは出来ない)に渡す。アメリカと日本は昼夜逆転しているので、そのやり取りが過熱しているときには当然寝れない。朝方終わってやれやれと寝床に入ろうとすると、残暑がカァーっと襲ってきて、やはり寝れない。(クーラーがないせいだ。とほほ)このプロセスとプレッシャーに比べると、ツアーなんか楽なものである。しかし今回のツアーの行程は今のところ6週間の日程のうちにショウの無い日は4日。しかもそのうち2日はブッキング追加される恐れがある。いやはや。それもまた、ハードだ。

 Sydneyでのその後。ラジオの生放送を終えたボクらは会場の方へと戻る。今晩やるSandringham Hotelは今やSydneyに残っている数少ないロックバンドが演奏できる会場だという。しかもここももうすぐに取り壊しになると言われているそうだ。Sydneyでの主流はエレクトロやテクノ、Hip Hopで、ロックバンドはかなり追いやられてしまっているのだと言う。あれだけロックバンドが沢山いたメルボルンから来て、同じ国なのに(しかもSydoneyは一番の大都市だ)そんな極端な偏りがあるのに驚くが、実際Sydoneyのロックバンドは会場が無い為に路上でやることも少なくないそうだ。(しかし一方ではそれもクールだと言えなくもない)

 Mesa Cosaのメンバーのほとんどは元々Sydney周辺の出身であるにもかかわらず、この都市が嫌いなのだそうだ。確かに、Melbouneから来て、Newcastle、Wollongongと気安い場所を回ってSydneyに到着すると、都会特有の他者との繋がりの無さ、まるで田舎から都会の学校に転校してきた生徒のような気分になる。Pabloはちょっとナーヴァスになっているようだ。街に出ると、国の好景気を反映しての物価の高騰に驚かされる。以前よく通っていた北インドカレーのお店は、なんと2倍以上の値段になっていた。いやはや、まいったな。

 しかしそのロックバンド不景気のSydneyで、しかもいくつものDanceイヴェントが同日にあってお客の入りが心配されていたものの、会場はパンパンに人が入り、このツアー最大の盛り上がりになった。ボクらも、これをやったら後は帰るだけという気持ちがあるものだから、何の躊躇もいらない。おそらく10年振りくらいになるであろうTighten Rap(もちろんPittが演奏するのは初めて)までやったくらいである。この曲はズボンズが始めてオーストラリアに紹介された時にスマッシュヒットした曲なので、覚えている人、リクエストしてくる人が多かったのだけど、今の演奏スタイルとの接点を(ボクが)見つけるのが難しく、ずっとやらないでいた。あの曲は内省的なところが全然ないので、エネルギーが一方的に外に向かっている時でないとやりづらい。最終日だとか、Sydneyのオーディエンスだからとか、ラジオやったからとか、「その日その時」のシチュエーションがそれを選択させる。これまたボクの支配下にあることではないのである。

 いくつもの乾杯があり、いくつものハグがあり、いくつものキスがあり、物販は飛ぶように売れて、ライブは終了。ツアー最後の夜だし、ということで片付け終わって皆でパブへと繰り出した。ズボンズ史上、一番アルコール摂取量の多かったツアーとなった。また、これまでやったオーストラリアツアーでも、一番充実していて、楽しいツアーだったと思う。長いこと活動して、年を重ねてそう思えることは、僥倖としか言い様がない。人生は、ボクらをどこへ連れていってくれるのでしょうね。

 ・・・・と思い出している残暑厳しい東京の朝である。ミンミンゼミも最後の声をあげている。アンコールは、なしだぜ。やれやれ、これから歯医者に行かなくちゃ。
by dn_nd | 2012-08-31 08:50
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